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1970年1月20日火曜日

第3号短評

Introduction


 短評企画とは、編集部が提示するテーマに対して、600 字の日本語ないしは 150 単語の英語で各々思ったことを述べる企画です。この企画では、冒頭に筆者の majoring を記すことが条件になっています。それは読み手が書き手のことを知らなかった時に最低限の個人情報として機能します。それは書き手と読み手の相互作用が重要視されるMarginalia において不可欠な条件でもあります。しかし、わざわざmajoring を先頭に付けることを強要されることによって書き手側は自分のmajoring から作用を受けます。書き手は自分の人生のテーマみたいなものを「majoring」の形で主体的に選んでいるはず。しかし、この企画ではその力関係が逆転し、majoring によって書き手側が文章の内容を選ばされてしまう。その作用に書き手側はどう抗っていくか。そこが本企画の最大の見所だと考えます。
 前回の題材は星新一著『おーいでてこーい』、SF というジャンルでした。具体的な内容は言えませんが、様々な角度から「深い」読み方が可能な文章を選んできた(つもりな)ので、書き手は自分のmajoring からの感想を寄せやすかった。いわばmajoring に映される「自分」とテキストの距離が近かったわけです。油断していると、自分の言葉ではなく、自分の分野の言葉で記述させられてしまっていた。だから、今回は逆にしてみる。ただのお酒の広告。示唆も教訓も何もないように見える。酒の広告が説教臭かったら役に立たないですものね。研究や勉強とは対極の位置にあるこの題材を見せられて、何か感想を書けと言われて、何ができるか。ましてや自分の専攻が冒頭に表示されているわけです。そこには前回と逆向きの作用がある。油断していると、ただの感想文になってしまう。名詞代わりのmajoring はどこへ?そんな書き手の方々の葛藤が文章に現れていて前回とは違った面白さがありました。前回よりも一人一人の「ひらめき」が個性的で色彩豊かに集まりました。協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました。また、広告掲載を許可して下さったSuntory 社の牟田拡様にも改めて御礼申し上げます。
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 一つだけ補足を。majoring というのは最低限の個人情報としてふさわしいのか?という議論には僕は目を瞑ることにしています。もっとworldwide な企画になれば、出身地でもいいでしょう。hobby とかも面白いかもしれません。世代をまたいだ書き手がいるのなら、生年月日も楽しいでしょう。たまたま学生が多いからmajoring を名刺代わりに用いただけです。
 今後この企画が熟していけば、別の名刺も試してみたいです。


高橋忠宏Tadahiro Takahashi



註:尚、今回の短評企画に用いた写真は、高橋と鷲見が今後の短評企画の方針を上野のとある食事処で検討している時に、そのお店でインテリアとしてたまたま掲示されていたものである。短評企画を告知するにあたっては、まずその場で高橋が撮影した物をFacebook 上で公開した。その後Suntory 社に掲載の許可を取ることができたので、その際Suntory 社から送られてきたものを改めて公開した。今回本誌に掲載されているのはSuntory 社から直接送られてきた物である。

※冊子に掲載した写真については、サントリーホールディングス株式会社より転載許諾をいただいています。



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